本文へスキップ
無料ではじめる
← 記事一覧

柔道の組み手を振り返る試合ノートの書き方

12 分
柔道の組み手を振り返る試合ノートの書き方
この記事の内容

地区大会の2試合目、「始め」の直後に右袖を取られ、こちらが襟に手を伸ばす前に、相手の左手が上から奥襟に届いた。数秒後には内股で崩され、試合が終わって残っているのは「組み負けた」という感想だけです。柔道の試合ノートには、この最初の数秒を、相手がどの手で、どこを、どの順に持ったのかがわかるように書きます。

地区大会や県大会では、同じ相手と何度も当たります。道場で乱取りをする相手も、毎週だいたい決まっています。相手ごとに記録をまとめる考え方は対戦相手帳をつける理由で紹介していますが、柔道でまず書く価値があるのは組み手争いです。技を掛けるには組み手を持たなければならず、その組み方は相手ごとに違ううえ、試合が始まって数秒で見えてくるからです。

組み手争いで見ておくこと

はじめに、相手が右組みか左組みかを書きます。利き手と組み方は一致するとは限らないので、実際の釣り手が右手だったか左手だったかで判断します。自分と同じ組み方なら相四つ、逆ならケンカ四つです。この組み合わせによって、袖と襟の取り合い方は大きく変わります。相手が試合の途中で組み方を変えることもあるので、一つの試合だけで「この人は左」と決めてしまわず、その日はどうだったかを書きます。

次に、最初の一手です。袖、前襟、奥襟、背中、認められている場面での帯のうち、どこを、右手と左手のどちらで先に取りに来たかを書きます。クロスグリップのような組み方なら、それも書きます。こちらが持ったときに切ってくるのか、持たれたまま持ち直すのか、それとも気にせず掛けてくるのかも見ておきます。片手で持った瞬間に掛けてくるのか、両手がそろうまで待つのか、持ってから掛けるまでが長いか短いかも、一言ずつ書いておけば十分です。この数点だけでも、次に同じ相手と組むときの準備は具体的になります。

青い柔道着の袖を握る手の接写。
最初にどちらの手でどこを持ち、その後どう動くかを見ておきます。

得意技と投げる方向

相手の得意技が何かは、たいてい試合の途中でわかります。書いておきたいのは、その技でどの方向へ投げてくるかです。前か後ろか、相手から見て右か左かを書きます。内股が得意だとわかったら、その前にどんな崩しやフェイントが入るか、内股から小内刈への連絡技があるかまで書いておくと、乱取りで再現しやすくなります。

攻める方向が、釣り手で持っている側と同じかどうかも添えておきます。後で紹介する研究が注目した点で、記録する手間はほとんどかかりません。

技が掛からなかった後の動きも、同じくらい大切です。そのまま亀になるのか、すぐ立ち上がるのか、返してくるのかを書きます。「内股が外れると亀になって『待て』を待つ」と書いてあれば、次の試合で寝技に付き合う価値があるかを判断できます。

寝技・「指導」・試合の終盤

寝技では、相手が何を狙っていたかを、見えた範囲で書きます。亀を返しに来るのか、袈裟固や横四方固などの抑え込みに入るのか、絞め技や関節技に持ち込もうとするのか、それとも自分からは動かずに「待て」を待つのかです。見えなかった場面は空欄でかまいません。

「指導」は、どちらが、どんな理由で受けたかを、自分の理解で書きます。審判の基準は変わっていくので、条文の言葉ではなく「組み合わずに離れたところで指導」「消極的として指導」のように、場面がわかる書き方にしておきます。残り時間が少なくなったときや、ゴールデンスコアに入ったときに相手の動きが変わったかは、実際にそうなった試合でだけ書きます。

自分のことも書く

相手のことだけを書いたノートは、次の対戦で使いにくくなります。どの場面で引き手の取り合いに負けたか、いつ組み手を切られたか、自分が受けた「指導」とその理由、掛けに行けなかった時間帯を書きます。一度でもうまくいった技や組み方があれば、それも必ず残します。最初の印象と食い違う場面こそ、次に確かめる価値があります。

書くのは動作で、気持ちの推測ではありません。「技ありを取られた後、掛けてこなくなった」は記録になりますが、「怖がっていた」は記録になりません。

何をもとに書いたかを添える

メモには「記憶」「佐々木さんの動画」「コーチの話」のように、出どころを添えます。回数を思い出せなければ「何度か」で十分で、数字を作らないほうが後で困りません。2試合続けて同じ組み方だったとしても、それはまだ仮説です。反対の例があれば一緒に書き、動画があれば見直します。試合の記憶がどう薄れていくかは別の記事で扱っていますが、何時間以内に書けば大丈夫という決まった期限はありません。試合の帰りに書けるなら書き、無理なら翌日の練習の前に書きます。

試合ノートの5つの

この5つの欄は、本記事のために作った書式です。後で紹介する研究のどれも、ノートを書くことが柔道の成績に影響するかを調べてはいません。次に試すことを二つに絞るのも、研究ではなく本記事からの提案です。

書くこと
試合の情報 大会名と回戦(または乱取り)、相手の名前、階級、相手と自分の組み方(相四つかケンカ四つか)、何をもとに書いたか
組み手 最初に取りに来た場所と手、こちらが持ったときの反応(切る・持ち直す・そのまま)、片手で掛けるか両手がそろうまで待つか、持ってから掛けるまでの時間
技と寝技 よく掛ける技と方向、その前の崩しやフェイント、攻める側と釣り手の側が同じか、掛からなかった後の動き、寝技で狙うもの
自分のこと 組み負けた場面、受けた「指導」と理由、掛けに行けなかった時間帯、一度でもうまくいったこと
次に試すこと 変えることを二つと、それぞれをやめる条件

空欄や「不明」があってかまいません。畳の図やアプリのピンを使うときは、「ここで奥襟を取られた」「ここで亀になった」のように、その場所で何が起きたかを添えます。点を置いただけでは、後で読んでも試合を思い出せません。

青と生成り色の細長い布が左右に分かれ、それぞれの先にオレンジ色の円盤が置かれています。
次に試すことを二つ選び、それぞれどんなときにやめるかも決めておきます。

記入例:袖を取られ続けた地区大会の2試合目

次の記入例は架空のもので、実在の選手の記録でも研究データでもありません。書き方を示すために作りました。

試合の情報 地区大会、73kg級の2試合目。相手は森田さん。以前に一度当たっている。相手は左組み、こちらは右組みでケンカ四つ。記憶と、道場の佐々木さんがスマホで途中から撮ってくれた動画から。回数はわからない。

組み手 最初に右手でこちらの右袖を取り、次に左手を上から奥襟へ。両手がそろうとすぐ掛けてきた。こちらが襟を持っても切りに来ず、袖を離さないまま掛けてくる。

技と寝技 ほとんどが左の内股で、前へ。前かがみで防ぐと小内刈。どちらも相手から見て左方向で、釣り手で持っている側と同じ。内股が掛からないと亀になり、「待て」がかかるまで動かなかった。

自分のこと 毎回、先に襟を取りに行った。その間に右袖を取られ、袖の取り合いはずっと負けていた。組み合わずに離れたところで、消極的として「指導」を一つ(自分の理解)。襟だけ持った状態から大内刈に入り、一度はもう少しでポイントというところまで崩せた。一方的に攻められていたわけではない。

次に当たるときに試すのは、この二つです。

  • 先に袖を取りに行き、相手の右手にこちらの袖を持たせない。袖を持てたら、両手がそろうのを待たずにそこから掛ける。 相手が襟から取りに来るように変えていたら、この作戦はやめます。こちらが技に入るのが遅くて間に合わないときも同じです。
  • 相手が亀になったら、練習している亀の返し方を一つだけ試す。 すぐに立ち上がられたり、「待て」が早かったりしたら、寝技に力を使わず立ち技に戻します。

この二つは、次に当たる前にコーチと一緒に読み、試合の後に結果を書き足します。覚えている数回のやり取りから、次も同じことが起きる確率まではわかりません。次の試合で確かめるための手がかりとして使います。

トップ選手の試合を調べた研究から

組み手争いは、選手やコーチの経験談だけでなく、試合を観察した研究でも扱われています。ここで紹介する四つは、どれもトップ選手の試合を対象にした観察研究か、その整理です。

グラナダ大学の Javier Courel-Ibáñez らは、サンパウロ大学とニシュ大学の研究者とともに、International Journal of Performance Analysis in Sport組み手と攻める側の関係を調べた2014年の観察研究を発表しました。世界ランキングの対象となる12大会の242試合を対象に、男女のトップ選手を分析したものです。自分の組み手と同じ側へ攻めた場合にスコアと勝利につながりやすく、その傾向は性別や階級に関係なく見られたと報告されています。組み方の組み合わせ別では、ケンカ四つで同じ側へ攻めた場合が最も効果的で、とくに軽量級で目立ちました。相四つで同じ側へ攻めた場合や、攻める側だけが組み手を持っている状態での攻撃も、勝利と関連していました。トップ選手の試合を観察したもので、地域の大会に出る選手で試した実験ではありません。「いつも組み手側に攻めればよい」という意味ではなく、次の試合で自分に起きる確率を示すものでもありません。

ここからノートの項目として取り出せるのは、相手がどちら側を持つか、どちらへ攻めるか、その二つが一致しているかの三つです。相四つかケンカ四つかで「同じ側」の意味が変わるので、組み方の組み合わせも一緒に書きます。この項目の立て方は研究が示したものではなく、本記事の考えです。

サンパウロ大学の Daniel Brandão Kashiwagura と Emerson Franchini は、Revista de Artes Marciales Asiáticas組み手争いの研究を集めた2022年のスコーピングレビューを発表しています。2020年12月までの英語文献286件から41件を選んで整理したものです。最もよく使われていた組み手は襟と袖、最も多い組み方の組み合わせはケンカ四つでした。経験のある選手ほど道着を持ってから掛けるまでの時間が短く、男子、とくに重量級の選手は長く持って、両襟の守備的な組み手を多く使っていました。現行ルールでは組み手を持つことが投げる前提になる、とも述べられています。主にトップ選手を観察した研究を見渡したもので、示されているのは集団としての傾向です。一人ひとりの相手に当てはまる決まりではありません。

この平均像から、目の前の相手がどうずれているかを書くのが実用的な使い方です。最初の組み手からすぐ掛けるのか、両手で長く持ってから動くのか、背中を持つ、クロスグリップ、帯を持つといった標準的でない組み手を使うのか、それで何をするのかを書きます。

同じサンパウロ大学の Franchini らは、Perceptual and Motor Skills技の種類と方向を比べた2008年の研究を発表しています。1995年から2001年の世界選手権とオリンピックのメダリストのうち、各階級で最も成績のよかった17人と、それ以外のメダリスト16人を比べたものです。上位の17人はより多くの種類の技で、より多くの方向へポイントを取っており、技の数と方向の多様さは勝利やスコアと相関していました。2008年の研究で、対象はトップのメダリストだけ、しかもその後のルール変更より前の試合です。現在のルールや地域大会の結果として読むのではなく、方向を記録する理由を示した古い研究として読んでください。得意技の名前だけでなく、どの方向へ攻めてくるかを書く根拠はここにあります。一つの技を一方向に掛けてくる相手と、複数の技を複数の方向に掛けてくる相手では、準備の仕方が違います。

フローニンゲン大学とフローニンゲン大学医療センターの Suzan Schoof らは、International Journal of Sports Science & Coaching競技レベルを分ける特徴を整理した2024年のシステマティックレビューを発表しました。競技レベルの違いに関わる特徴を調べた23本の研究を整理したもので、組み手争いの特徴で競技レベルの違いを見分けられることには強い根拠がある、とまとめています。上位の選手の特徴として挙がったのは、相手を投げる力と技の多様さでした。才能発掘の観点から観察研究を整理したレビューで、どの組み手を取るべきかまでは述べていません。組み手争いをノートで丁寧に追う理由にはなっても、試合で何をすればよいかの答えにはなりません。

次の対戦までにコーチと確かめること

次に同じ相手と当たる前に、試すことを二つに絞ってコーチにも見てもらいます。試合が始まったら、前回の組み方が今回も同じかを早い段階で確かめます。相手が組み方や階級を変えていたり、こちらの技の入りが前回と違ったりすれば、メモのとおりに続ける必要はありません。

何人かの相手のページがたまったら、袖を取られる場面が誰との試合でも出ていないかを見比べます。同じ場面が繰り返し出るなら、それをコーチに相談して、乱取りや打ち込みで確かめる組み手の課題を一つ決めます。「左組みの相手に右袖を取られてから、奥襟を持たれるまでの間に何ができるか」のように具体的な問いなら、練習相手に同じ組み方を真似してもらえます。毎週組む練習相手にもページを作る考え方は、柔術の練習ノートの記事で扱っています。振り返りと競技力の関係を調べた研究も別の記事で紹介していますが、ノートを書けば勝てるようになる、とまで言えるものはありません。

OpponentBook は、こうした記録を相手ごとのページにまとめる対戦相手帳です。柔道では、試合場を描いた競技図にピンを置いてメモを添えられるほか、「立ち技:組み手」「崩し」「寝技:袈裟固」「寝技:亀(防御姿勢)」といった名前の付いたポジションでも、図の座標とは別に記録できます。ノートはまるごと無料です。

同期した記録は、自分で接続したストレージに保存されます。OpponentBook のアカウント用データベースにノートのコピーは保存しません。自分で AI の処理を頼んだときは、必要な内容が OpponentBook のサーバーを経由して外部の AI 事業者に送られます。任意のエンドツーエンド暗号化(E2EE)をオンにすると、暗号化された記録はストレージ事業者にも読めません。写真・動画と、ファイル名などストレージ事業者に見える情報は、この保護の外にあります。相手について遠慮なく書くノートなので、保存先と AI 処理、暗号化の説明も読んでおいてください。

今夜、いちばん最近の試合か乱取りを一つ思い出してください。相手が最初にどの手でどこを持ったか、その後に何が起きたかを、一行でいいので書いてみてください。それが、その相手のページの最初の記録になります。

あわせて読みたい

自分の対戦相手帳を始めてみませんか

ノートはまるごと、ずっと無料です。端末で始めて、あとから自分のクラウドを接続できます。

無料ではじめる