パデルの試合ノートの書き方

この記事の内容
ロブで相手を下がらせたのに、自分だけが前に出てパートナーとの距離が開いてしまいました。パデルの試合ノートにはこうした気になった場面を書きます。打ったショットと、そのとき二人がどう動いたかも一緒に残しておきます。
試合全体を細かく再現する必要はありません。覚えているラリーを一つ選び、相手の返球と自分たちの動き、次に試したいことをメモするところから始めましょう。同じ相手とまた対戦するときにパートナーと読み返せます。相手ごとに記録をまとめる使い方は、対戦相手帳をつける理由で詳しく書いています。
試合後に書いておきたいこと
ノートは毎回ペアとしての「うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」「次回やること」の三つを軸に書くのがおすすめです。パデルに限らずラケット競技でも格闘技でも、書き残す価値がいちばん高いのはこの三つだというのがこの記事の考えです。項目の最初の二つ「誰と、どんな試合をしたか」と「相手ペアの戦い方」には、三つを振り返るときの背景を書きます。
後で紹介する研究はこうしたノートの書き方で成績がよくなるかどうかまでは調べていません。
それぞれの項目に書くのは次のことです。
- 誰と、どんな試合をしたか 日付、練習試合か大会か。自分たちと相手の4人の名前とそれぞれのサイド、わかる範囲の利き手。屋内・屋外や風などの条件も
- 相手ペアの戦い方 サーブのコースとリターン、その次の返球。どちらのペアが先にネットに出たか。ロブなどのショットのコースと深さ、相手の返球。両方のペアの動きとそのラリーの結果。バウンドした球ならその位置。最初の印象と違うプレーがあればそれも
- うまくいったこと 自分たちがネットに出られたショットや位置取り、相手の甘い返球を引き出した球
- うまくいかなかったこと 自分たちが打ち急いだ場面、開いてしまった二人の距離や声かけのタイミング
- 次回やること ペアで試したいことと、うまくいかないときに変える条件
名前の横にはその日に誰と組み、どちらのサイドでプレーしていたかを添えます。左右はそれぞれのペアがネットを向いたときの向きで統一しましょう。相手の右サイドはこちらから見ると左側です。利き手など確認できていないことは「不明」でかまいません。
同じ選手でもパートナーやサイドが変われば、打つ球や動き方は変わります。相手が一度ロブの返球をミスしただけで「ロブが苦手」と決めつけず、そのとき何が起きたかを書いておきましょう。回数が曖昧なら無理に数字にせず「何度かあった」と書けば十分です。
試合の記憶と忘却についての研究は別の記事で扱いました。ただ、パデルのプレーを何時間で忘れるかが決まっているわけではありません。だからといって後回しにする理由もありません。試合が終わってパートナーと話せるうちに書いておくとよいでしょう。
試すことはパートナーと決めればよく、数に決まりはありません。ただ、一試合のうちにペアで取り組むなら一つか二つで十分なはずです。多すぎるとコートに入る前から二人の作戦がややこしくなります。思い出せない項目は無理に埋めなくて大丈夫です。
ロブを打った後、二人はどう動いたか
「ロブがよかった」だけでは後からプレーを思い出しにくくなります。「相手の右サイドに深く入り、相手の二人が下がった。こちらも二人でネットに出られた」と、打ったショットと両方のペアの動きを続けて書きましょう。
ロブの後に見ておきたいのはこの三つです。
- 相手の返球 下がって返したのか、上から強く打ってきたのか
- 両方のペアの動き 相手の二人は下がったか、こちらは二人でネットに出られたか
- そのラリーの結果 誰のどのショットで終わったか
相手が下がったロブと、ネット付近で楽に打ち返された浅いロブは分けて記録します。スマッシュやバンデッハなど上から打つショットでどう返されたかも大事な情報です。ショットの名前がわからなければ「上から強く打たれて前に出られなかった」で足ります。
前に出るかどうかは実際のロブの深さと相手の返し方を見て判断します。深く打てたつもりでも、相手が強く打ち込めるなら守る準備が必要です。
サーブからの動きも同じように見ておきましょう。サーブを打った人が前に出る間、そのパートナーはすでにネット付近にいることがあります。二人がどこから動いたかを分けて書けば、サーブからリターン、次のボレーまでの流れがわかります。
自分たちについて確かめるのは次の点です。
- 二人の位置 ボレーで打ち合ったとき、ネットに近づいていたのは一人だけではなかったか。そのときもう一人はどこにいたか
- 前に出る判断 二人で動ける状況かを確かめず、自分だけが前に出ていなかったか
- 壁からの返球 壁から跳ね返った球を、跳ね返りを待って打てたか。急いで触ろうとしていなかったか
図を使うなら、手前を自分たち、奥を相手にするなど向きを決めておきます。印には「相手が打った位置」「ボールがバウンドした位置」などの説明も必要です。「リターンからラリー→深いロブ→相手が下がる→二人で前へ」のように順番も書いておくと後で流れをたどれます。図に点を打つだけではプレーの流れは残らないのです。
記入例:ロブとセンターへの返球を試す
以下は書き方を示すための架空の練習試合です。実際の選手の記録や研究データではありません。
相手と条件 9月15日、クラブの練習試合。いつも組むAさんと参加。相手はBさん・Cさん。こちらは自分が左、Aさんが右。相手はCさんが右サイドに入ることが多かった。左右は各ペアがネットを向いたときの向き。相手の利き手は未確認。屋外で風は弱め。どの場面が何度あったかまでは数えていない。
相手ペアの戦い方 Cさんのサーブを低く返した後、相手がボレーで返してきた。サーブのコースや回数はよく覚えていない。深めのロブでもCさんのスマッシュで決められたことがある。「Cさんはロブの返球が苦手」とはまだ言い切れない。
うまくいったこと Cさんのいる側にロブが深く入ると相手の二人が下がり、こちらがネットに出られた場面があった。
うまくいかなかったこと こちらのリターンが浮いたときは攻め込まれた。浅いロブは上から強く打たれて前に出られなかった。ロブの深さを確かめる前に自分だけ前へ出て、後ろのAさんとの距離が開いてしまった。二人の間を抜かれたのは自分が早く動きすぎたせいもありそう。次は前に出るタイミングを二人で確認したい。
パートナーと話して、次の試合で試すことを決めました。
- 体勢が整ったら深いロブを打ち、返球を見て二人でネットに出る。 ロブが浅くなったり相手が強く打ち込めたりするときは、前へ急がず守る位置を整え直します。
- 相手が左右に広がったら無理に角度をつけずセンターに返す。 相手二人の間を狙い、次の返球をどちらが打つかパートナーと確認しておきます。相手の一人がセンターを守っている場合や、こちらの球が浮いて攻められる場合は別のコースや返し方に変えます。
センターに打ってもセンターに返ってくるとは限りません。実際の返球に合わせて動く必要があります。英国の競技団体 LTA のパデルの戦術ガイドにも、ネットプレーやロブ、センターの狙い方が紹介されています。壁の使い方やパートナーとの声かけにも触れられています。初心者向けの指導上の助言で、実験で確かめた資料ではありません。
この例では深いロブでも攻め返された場面を一緒に書いています。覚えているいくつかの場面だけで次もうまくいくとは判断できません。パートナーのミスを責めるためではなく、次に何を試すか二人で話すためのメモです。
ネットでのプレーやロブについて、研究でわかっていること
プロの試合を分析した研究でもネット付近の位置が注目されています。
エストレマドゥーラ大学の Adrián Escudero-Tena らは、マドリード工科大学とムルシア大学の研究者とともに Perceptual and Motor Skills にネットの位置とラリーの結果を調べた2023年の観察研究を発表しました。調べたのは2021年の World Padel Tour の男女の試合から集めた2,756ラリーです。ラリーが終わった時点でネット付近にいたペアが、そのラリーを取っていることが多いという関連が見られました。
試合映像の分析なので、ネットに出たことが得点の原因だと確かめたわけではありません。プロ以外の選手に戦術を試してもらった実験でもないのです。
Escudero-Tena らエストレマドゥーラ大学の研究グループ GOERD は、International Journal of Environmental Research and Public Health にロブと攻守の入れ替わりを調べた2020年の観察研究も発表しています。対象は2018年シーズンの女子 World Padel Tour、14大会の決勝です。守備側が、攻撃していた相手のペアの後方へボールを返した場面を選んで調べています。ロブの使用と、ネット付近へ出て攻撃する側に回れたことには関連が見られました。ネットに出た後もラリーは続くことが多かったそうです。
こちらも試合の観察研究で、すべてのロブやラリーを数えた結果ではありません。対象はトップレベルの女子の決勝ですし、ネットに出られたことはそのポイントを取れたこととも違います。普段の練習試合でも同じようにいくとは限らないでしょう。
ノートでは「ロブを打った」で終えず、相手がどう返してその後どちらがネットにいたかまで書いてみてください。
次に同じ相手と対戦する前に
試合前にメモを読み返し、何を試すかパートナーと確認しておきます。序盤から無理なく試せる場面を探し、前回と同じことが起きるかを見ます。相手のパートナーやサイド、風などの条件が変わっていればその違いも考えましょう。こちらのロブの深さや相手の返球が前回と違うときもメモどおりに続ける必要はありません。
試合が終わったら試せたことと結果を追記します。狙いどおりに打てなかったならそれも一行残しておきましょう。
別の相手との試合でもロブが浅くなるなら、どんな場面で浅くなったかを比べてみます。壁から跳ね返った球を返すときに多いのなら、深いロブを打つにはどうすればよいか次の練習でコーチに相談してみてください。メモや動画を見てもらえばどの場面を練習したいか伝えられます。もっとも、ノートを書くだけで上達するとは言えません。わかっていることとわかっていないことは振り返りと競技力の関係を調べた研究を紹介した記事にまとめています。
OpponentBook は相手ごとに記録をまとめる対戦相手帳です。パデルのコートを描いた競技図にピンを置き、メモを添えられます。ノートはまるごと無料です。
同期した記録は自分で接続したストレージに保存されます。OpponentBook のアカウント用データベースにノートのコピーは保存しません。自分で AI の処理を依頼したときは、必要な内容が OpponentBook のサーバーを経由して外部の AI 事業者に送られます。任意のエンドツーエンド暗号化(E2EE)をオンにすると、暗号化された記録はストレージ事業者にも読めなくなります。写真・動画と、ファイル名などストレージ事業者に見える情報は、この保護の対象外です。詳しくは記録の保存先と AI 処理の説明を確認できます。
まずは最近の試合を一つ選び、パートナーと相手の名前、覚えているラリーを書いてみてください。自分とパートナーがそれぞれどう動いたかもそこに添えます。続けて、ペアとしてうまくいったこと、うまくいかなかったことを書き出しましょう。締めくくりに、次の試合で二人で試したいことを一つか二つ決めておきます。次の試合前には具体的な場面を挙げてパートナーと話せるはずです。


